Ready to Bake.

日々雑感
休業から96日目。1年間の1/4をProject"B"で消費してしまいました。なのでこう考えるようにしています。「1年の4/5を山で消費していたキック名人よりはマシ」。いったい山で何を食べてどうやって生きていたのか不思議な話ですが、今の自分も数年後にはそう回想されるのかもしれません。気がつけば体重は6kg落ちて、そこから落ちなくなりました。ピールを3段目まで持ち上げるためにも、そろそろパワーアップが必要です、。

先週は土曜日の定期更新の2日後に「号外」として窯入場を更新しました。これで道具は全て揃って焼くだけだ!と言いたいところなのですが、なかなかそうはさせてくれません。窯搬入翌日の水漏れや窯付属の大きな道具の長さ調整やその収納場所の確保、熱を入れたら硬くなった窯扉の調整、引っ越していた諸々の道具の運び込みと設置、それらの作業と平行して続けている掃除や酵母起こしなど、ポケットの中のメモには常にびっしりとやることが書かれていて、なかなか減りません。でもきっと、あともう少しのところまで来ている筈です。登山終盤戦は大概いつも山頂が見えてからが長く遠く感じるものです。今週も沢山の事が進んだので話題多めです。

今週の本題


タカポの棒
作業台の下の高さ7cmの隙間にジャストな引き出しに取っ手がついて完成しました。
取っ手造りの担当はキック名人。100%お任せだとコワイので、一緒に部品を買出しに行きました。思い返せばベースベーカリーを始める直前、「パン屋のロゴマークを考えてほしい」とお願いしたら「出来たー」といわれた30秒後。ああ、頼む人を間違えた、と思ったのは4年ほど前の記憶です。麦とかパンをモチーフにした色々なマークがある中で、ベーカリーなのに「なぜこれ?」って聞いたら「好きだから」と言われて、もう何も言えなくなった今の「山マーク」。斬新なアイデアは相変わらず一級です。そんな彼女の選んだ取っ手は「タカポの棒」。これは思い出の1本の流木で、どに行くにも一緒だったタカポの止まり木の残りでした。まだ産毛だった頃に保護して元気に巣立ったタカポの木。頭の上がお気に入りでしたが、だんだんと爪が痛くなってきたので肩に変更してもらった懐かしい思い出です。


1本の流木を切って、3つの引き出しに分配します。毎日使う引き出しなのでビス固定だけでは不安でネジ式にしました。割れないようにウケを取っ手に打ち込み、皮を剝いで表面をきれいに磨きます。


つなげれば1本の木に戻る3つの取っ手が取り付けられて、ようやく完成となりました。流木のネジレや適度な起伏のためか、意外にも使い勝手は良さそうです。


削りすぎは、
スペース活用の思いつきで引き出し製作を始めた当初、どうせなら「江戸指物」のような「わずかに擦れながらスッと入る引き出し」を目指していました。しかし、完成したこの引き出しには左下がりに大きめな隙間があいています。連日助けてくれたお客さんによる傑作。まだ取っ手の付いていない引き出しを何百回も開け閉めしながら、抵抗を感じた場所を少しずつ手やすりで削っていってくれました。若干Uの字に削れているのは、当て木を使わず手で紙やすりを当ててくれていたからです。

優しさの形です。
当初引き出しの左端は高かったので台に当ってきちんと閉まらない状態からスタートして、気がつけば江戸指物の「シュッ」とこすれるピークを超え、下山に差し掛かってから大分いったところで気がついてストップ。これだけ削りすぎた場合、修正よりもヤリ直しの方が早いのですがもったいなくて出来ません。粉が入ってくる様なら作り直さないといけませんが、大切にこのまま使わせて頂きます。ボランティアで連日通ってくれて、工具を使わずに紙ヤスリでこれだけ削ったということは、どれだけの時間と手間をかけてくれたかが想像できます。「パン焼きの忙しい時、スムースに仕事が運ぶように、摩擦抵抗の多くないスムースな引き出しを目指して」作業してくれたお客さんです。


結果的に削り過ぎてしまったことをとても悔やんでいましたが、これはペンキ塗りや柿渋塗りでも起きる「夢中」が作用したのでしょう。そしてなによりも、これだけ一所懸命に込めてくれたという事実。この隙間はその優しさの形です。意図せずともこの引き出しに最初に仕舞われたのは「彼には悔やまれるけれど僕には優しい思い出」。それを引き出すのはタカポの思い出です。

ピールの台 Ver3
窯入れ直前のパンを並べる作業台=ピール。
それを支える台=馬、を改善しました。窯の2段目と同じ高さで造った馬に自在キャスターを取り付けたVer2のあと、1段目と同じ高さにも出来るフックを取り付けたVer3です。しかし、金属性のフックがピールを削るといけないので、名人に革当てを造ってもらいました。このあと指をヤッたことは内緒です。


まだ解決できない3段目
窯の3段目に重たい2mのピールを持ち上げて挿入する「楽な」方法がいまだに見つかりません。馬の改造では3段目の難所は解決でそうにありません。3段目の高さにあわせた馬を用意すれば良さそうなものですが、高さがありすぎて踏み台が必要。長さもあるので作業中に踏み台の移動も必要で現実的ではありません。2段目から持ち上げる練習で早くも肩を痛めてしまった自らのパワーアップが、最善の策に思えてきたこの頃です。

思い出の棚
雪仲間のハチさんが昔組み立てた棚。せっかちな彼は一足先に旅立ちましたが、遺してくれたモノは使いたいと思っています。そんな思い出話をしながら、せっせとたっぷり一時間、予定に間に合うギリギリまで拭き掃除をしてくれたパンのお客さんです。「どう?大丈夫?無理しないでね、何かできる?」そんな風に立ち寄ってくれて、作業着もないのに手伝ってくれる人々。本当にありがとうございます。少し肌寒い天気の中、素手で水拭きをしてくれて、輝きを取り戻しました。


ミキサーいじり
特注で造ったミキサーですが、設置場所の移動に伴ってケーブルの固さや位置、長さや安全装置の仕様を変えることにしました。こういうちょっとした調整や変更が、どんどん出てくる今週です。


まだやってんの?早くパン焼きなよ。
そんな声が聞こえてきそうな大工仕事が終りません。「もう丸ノコは使わないだろう」と書いてから3週経っているのに今週もこの有様です。ケーブルをやり換えたミキサーの高さ調整台。どうしても必要な台なので造るより仕方がありませんでした。どうかお許し下さい。もう少しのところまで本当に来ている筈なのです。


塗られていない木肌を見つけた名人、早速の柿渋塗布です。今週は引き出し取っ手で大活躍だった名人がよく手伝ってくれています。柿渋は色の為ではありません。天然成分だけで防虫効果と防水効果を期待しての塗布です。


この台、250Kg程度までなら支えられる強度の筈です。この後キャスターを付けて名人が乗ってみたところ、道路を走れました。なかなかスピードも出て快適。ミキサーの振動や動きにも十分耐えられそうです。


ピールのバンパー完成
先週も少し触れましたが、2mのアルミ製ピール(パンを窯に入れる台)を壁に立て掛けるとき、壁が削れるのでバンパーを用意しました。横になっているピールを縦にして片付ける「ピール回し」のあとで「ゴン!」と立て掛けても、皆が塗ってくれた壁をキズつけないように。年月が経過してUに湾曲していた昔の杉板をカンナして平面を出し、柿渋を塗布して壁に設置します。SPFには無い、杉のいい香りがします。


これでようやく一安心です。きれいに磨いた杉板ですが、あくまでもバンパー。ぶつかるもので、へこむものです。キズだらけになることを良しとする数少ないインテリアの完成です。


窯掃除
設置された翌日に水漏れした窯を修理の前に掃除しました。2mのモップが必要で、後ろの壁を突かないように気をつけました。強く絞った新品の窯専用モップで根気良く拭き掃除です。気持ちの問題で洗剤は使いません。


ガラス調整
試運転で温まったら扉が固くなってしまった窯。ガラスを外して取り付けなおすついでに徹底的に磨きました。耐水ペーパーを使ったのは何年振りでしょうか。それでも落ちない焦げサビに長い年月を感じました。


「トレました」を取りました
温度は約0度を示していますが、真っ赤なウソです。室温20度近くあります。「大雑把な最新」として紹介したアナログタイマーと同じで、ゼンマイの仕様なのか、50度以下は何度でも0度と表示します。。。こういう大雑把なパートナーとうまくやって行く為には、こちらの考え方や性格も変える必要がありそうです。


左官屋さんと再開
土間コンを仕上げてくれた砂川さんから連絡がありました。「パンは買えるようになりましたか?」「実は、まだです、。」近くの駅まで左官道具を買いに来た彼がこうして気にかけてくれていることが嬉しかったです。あの日「きれいに仕上げても床はほとんど見えなくなる」という言っていた彼に、「見えなくなってきました。。。」と案内中です。


この夜は彼からの貴重な頂き物を開ける事にして一杯。旨みの凝縮したカツオの塩辛で美味でした。いつか宮古の酒で一緒にやりたいと思いました。人とのつながりに改めて深い有難さを感じることが出来た事は、project"B"最大の成果の1つです。


新旧の境
改装前と改装後、壁が違っています。この隙間をコーキングするキック名人。 溝が深いのでマスキングがとても難しい場所です。まだまだコーキングが必要な箇所はありますが、すっかり暗くなったのでまた後日。いくらやっても時間が足りませんが踏ん張りどころです。


テスト=本番
前回の「糸と意図」の”酒の意図”の項で、窯の無いパン屋に酒(発酵した液体)が集まってくる話をしました。そしてこうも書きました。「もしかして窯が入ったら酒ではなくパンが集まるのかもしれません。」と。

なんと窯が搬入された数日後、パンではなく、すごい麦が2か所から集まってきて、本当に驚きました。あの文を書いた数日後の作業中に生産者さんから連絡がありました。「窯のテスト焼きで使ってほしいのでお祝いとして麦を贈りたい」。早すぎれば改修作業の邪魔になるだろうということで、出荷のタイミングをずっと見計らってくれていました。本当に有難いというか、恐れ入りました。テストで使う様な麦ではありませんが、かといってテストで使ってもいい麦というのも、持っていません。テストのために市販の小麦粉を買うのもヘンですし、そもそもベースで挽いた全粒粉でなければテストにもなりません。気持ちの上でも材料も、テストから本番ということになりそうです。

祝いの麦
ピリカアマムより
2018年度の自然栽培小麦「春よ恋玄麦」

オフイより
2018年度の自然栽培小麦「キタノカオリ玄麦(右)」

草の香りが強く漂う麦のいい香りです。今年の春よ恋は透明感があり、わずかに一皮分くらい小さい印象ですごく美しい粒でした。丁寧な磨き作業もしてくれていて輝いています。「キタノカオリ」は生産者泣かせの現代麦で、なんというか粒の表情一つ一つに苦労と忍耐の跡が感じられ、「よく頑張って育ってくれた」「大変な苦労をしながら収穫してくれた」そんな雰囲気を纏っていました。いずれにしても現代品種の小麦を古代農法自然栽培で収穫する辺りが常軌を逸しています。こういう栽培も可能なんだという輝ける実績の裏に、どれだけの涙と敗北があったことだろうと想像します。それも、過去の昔話ではなくこれからも毎年繰り返される伸るか反るかです。使わせてもらえることが、当たり前になってはいけない麦です。

そんな麦が届いたということで、もう少し後になると予想していたこの棚の「取り付け」を急ぎました。特等席の唯一の「見える壁」にレベルを出して慎重に。


演奏家の彼に変則的な形状の足のシェイピングをしてもらった通称「カミダナ」。三種の神器に感謝を込めて初心を忘れないために取り付ける杉の飾棚です。改装前の工房にも「カミダナ」はありました。お客さんから頂いた手紙や麦畑の写真、麦の穂もここにあがっていました。


訪ねてくれたり手伝ってくれた別々のお客さん3人から頂いた、みかん、ゆず、かきを強度テストも兼ねて並べてみました。工房からもう少し大工道具が無くなって、試運転の製粉をする時には三種の神器「麦・塩・水」へ乗せ替えます。今までもこれからも、この3つがベースベーカリーのパン生地を構成する「全て」です。11月中にパンを焼く目論見、あきらめてはいません。環境が変わった酵母のパワーもかなり不安定なので、突然の告知になるかと思います。これまで通り、ツイッターのみで告知いたします。

コメント

  1. おはようございます。人が人を呼ぶ。情熱が情熱を支える。
    再開、待ち遠しいです。頑張ってくださいね!
    三輪

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    1. ありがとうございます!早く小麦を挽ける様に頑張ります。再開も再会も楽しみです。

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