パン焼きをあきらめる瞬間

日々雑感
8月7日から休業に入りって以来、軽重作業の日々を元気に過ごしています!
素人頭で考える計画は、どうも軽く見積もりすぎる傾向にある様で、「時間が掛かるもんだな」と今回も痛感中です。

3年前のオープン準備の時も「専門家に任せる」とか「おすすめの機材を買う」とか、そういう間違いのなさそうな道にどうも魅力を感じきれず、色々な機材をこつこつ作った事がとても懐かしく思い起こされます。工房設備、機械、売り場、看板、と思った以上にやらなきゃいけないことが多く、バタバタしたものです。(自分でやるからですが、、、)

現代の機械はとても優れていて、それゆえ大抵自分にとって過剰に大きく、驚くほど高価で、使わなそうな機能までついているのでなお更、無駄に思えたものでした。 特に製パン機器の値段の高さは、本当に驚愕レベル。中古でそろえても怖いレベル。げんこつサイズで一個数十円の利益を得るパン屋が、こんな高価な機械を使わないといけないのか、と、世の中が恐ろしくなったものです。

「もしこれらを買ってしまったらダメだ、、、きっとエライことになる、。」

それは賢い計算から導かれた冷静な予測ではなく、本能的な危険回避ブレーキだったような気がします。
売れるパンをリサーチしてつべこべ言わずに大量生産して大量販売の道を選ばないと生きていけない。材料もなるべく、、、安いものを選ばないと、。
大量販売っていったって、買ってくれれば、のお話し。

さて、
果たしてあの時、開業に必要とされる中古機器をそのまま導入していたら本当にそんな世界が待っていたのかどうか、事実はわからないままです。 多くのパン屋さんがそれで頑張ってきているのだから、細胞レベルで怖がることも無かった、のかもしれない。

ものづくりが好きなこともあって「自分の道具は自分が作るのが一番だ」などと考え、3週間程を予定した発酵機の製作に2ヵ月も費やす素人ぶりを存分に発揮していたあの頃。
いいものを作るには時間がかかるんだ。なーんていうのは半分はウソで、そんなにかからないと思っていたのにかかっちゃった。っていうのが半分の本当。

何でもやってみなければわからない。
でも、どっちを選んだとしても、
どっちをやるべきだったかは、
きっと最後までわからないのかもしれない。

今週の本題 
 PROJECT"B"も、1ヶ月の予定(イメージ)が倍以上の気配。
進めるしかないので、まず手がけたのが今回の話題「パン焼きをあきらめる瞬間」。
別名:石臼解体

ベースベーカリーは2機の石臼(電動)を使っています。
  1. 小さいやつ。
  2. 大きいやつ。
 オープン当初はドイツでカスタマイズしてもらった「小さいやつ」だけでした。
ドイツ人の女性に「ライ麦率90%以上のパンが食べたい」といわれて即導入を決めた機械でした。即、と言っても、商品になるまでには、これまた大分時間が掛かりました。オーダー交渉、カスタマイズ、輸送、通関、試運転、そして試作。

当時、問屋さんにライ麦を粒のまま仕入れて欲しいと交渉したところ「粉でいいじゃないの、1人のためにやるの?やめたほうがいいよ。」と心配されました。
ライ麦90%や100%なんて日本じゃ売れないよ、って。
確かに仕入れてもらえても量が多く、場所もとるし、売れ筋パンになるとは想像できない。原料が減るのも遅い、手間は掛かる、酵母も別に培養しないといけない。それこそ石臼だって買わなきゃいけない。あの時そのどれもが、新しくて楽しそうなことに思えたのは幸運でした。
そんなロゲン専用だった「小さいやつ」。
今は香りが強いローストした穀物専用。

「小麦全粒粉」「ライ麦全粒粉」の全てを製粉しているのは「大きいやつ」。これはオーストリアからやってきたメイン機で、設置してからアーダコーダしてカスタマイズ。デフォルトではとても製粉能力(速度)が高く、短時間で大量に製粉できるので熱を帯びるし香りも飛ぶので好みの速度に設定できる様に改造した自分の道具です。
香りが飛ぶって言ってもわずかだけれど、わずかな向上のための道具なのだから、わずかながらに大事だと思っています。製粉能力を下げる改造。あまり無いでしょうね。

それで、
休業の間、もしも工事が始まらないうちに新小麦が間に合ったら、臨時で製粉して焼けるかな、などと思って日々の清掃だけをしていたのですが、タイミングが難しそうなので「大きいやつ」を解体することにしました。大きければなお更、臼のスキマに粉の蓄えができます。その粉は次の製粉時に押し出されるので普段は作業粉として使い、休業の時には掃除をするのです。
今回は約2ヶ月ですし移動もある。さらに製粉の方法もより複雑にする計画があるので、電気配線も引き抜いて潔く解体。石目の隙間も新品の様に掃除しました。

あぁ、これでしばらくパン、焼けないなぁ。。。
そんなちょっと寂しい気持ちで作業を開始したのですが、汗と粉にまみれて作業していると、気分も変わってきて「よく働いてくれてるなぁ」とお礼を言いたくなりました。

でもでも、解体してきれいになって、電線も外されてパーツになってしまっている姿を見ると、元気に稼動している姿が余計に遠くに感じたので、言っておきました。
「早く動かしたいけれど、しばらくお休み。次の仕事はテストベイクだよ!」と。

PS:
窯がみごとに復活すればね。というコワイ条件は、内緒にしておきました☆

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